Case409 有期雇用契約が民法629条1項により黙示に更新された場合には無期雇用契約に転化するとした裁判例・学校法人矢谷学園ほか事件・広島高松江支判平27.5.27労判1130.33

(事案の概要)

 原告労働者Aは、被告法人と2年間の有期雇用契約(第1次契約)を締結し、平成18年4月に法人の参事として採用され、平成19年4月に法人の理事に選任されました。法人は、契約期間満了前に第1次契約を更新するかどうかについて決議せず、原告Aは平成20年4月以降も勤務を継続し、法人も特に異議を述べませんでした。

 原告労働者Bは、平成17年10月に法人の理事に選任され、平成20年10月に再任されていました。

 平成22年10月、法人は、原告らが元鳥取県議会議員である被告Y3に対して手紙を交付するなどし、被告理事長を退任に追い込もうとしたなどとして、原告Aを懲戒解雇、原告Bを懲戒解任としました。

(雇用の更新の推定等)

第629条1項 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

民法

(判決の要旨)

1 原告Aの無期雇用への転化

 判決は、原告Aの第1次契約が黙示に更新されているところ、黙示に更新について定める民法629条が、1項後段において、各当事者は、期間の定めのない雇用の解約の申入れに関する同法627条の規定により解約の申入れをすることができると定めていることに照らせば、雇用契約が黙示に更新された場合、更新された雇用契約は、期間の定めのないものになると解するのが相当であるとし、平成20年4月以降原告Aは無期雇用に転化していたとしました。

2 懲戒解雇及び懲戒解任の有効性

 判決は、被告理事長が原告Aに対して不法行為に該当するような退職勧奨行為等をしていたことが認められ、原告らはこのことを含めてY3に相談していたこと、Y3は部外者ではあるものの、過去に教職員と法人理事らが対立した際に解決に尽力した人物であり、Y3が他の部外者に情報を漏らした事実もないことなどから、懲戒解雇及び懲戒解任は重きに失するとし、原告らに対する懲戒解任及び懲戒解任を無効としました。

※確定

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