Case492 組合専従から復職した労働者に対して労働協約に違反して従前の業務とは異なる単純作業を命じたことが人格権侵害に当たるとされた事案・ネッスル(専従者復職)事件・大阪高判平2.7.10労判580.42

(事案の概要)

 原告労働者A及びBは、労働組合の専従者となることを理由に被告会社を休職しました。

 組合と会社との間には「専従者がその任を解かれた場合、会社は直ちに専従就任時に所属していた職場に本人を復帰させるものとする。若しそれが難しい時は、同等の職位に復帰させるものとする。会社は専従者の復職の際、勤務の中断が全くなかった場合と同等の水準の地位賃金及び有給休暇の権利を保証する。」との労働協約がありました。

 しかし、会社は、原告らの復職に際して、従前の業務と異なり、原告Aに対してはコーヒーの空袋に残されたコーヒー豆を回収する作業、原告Bにはコピー用紙を裁断してメモ用紙を作成する作業等を命じました。

 本件は、原告らが、労働協約に違反する人格権侵害があったとして会社に対して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、被用者が、使用者から、労働協約に違反した明らかにいやがらせといえる著しい隔離的、差別的取扱いにあたる作業に従事することを命じられ、被用者がこれに応じて屈辱的な就労を余儀なくされた場合、被用者は、自由、名誉等に準じた個人の人格権が侵害されたものとして、これによって生じた精神的苦痛に対する損害の賠償を使用者に求めることができるとしました。

 そして、原告Aについて、労働協約に違反して、劣悪あるいは隔離された職場環境のもとで、かつ長時間にわたり専属的に、コーヒー豆回収作業等の作業を行うことを命じられたものであり、原告Aに対する人格権侵害が認められるとして、会社に対して使用者責任に基づき慰謝料70万円の支払いを命じました。

 原告Bについても、労働協約に違反して、メモ作成作業、金券廃棄作業等の単純作業に専属的に従事することを余儀なくされたばかりか、その作業の過程で種々のいやがらせを受けたものであり、原告Bに対する人格権侵害が認められるとして、会社に対して使用者責任に基づき慰謝料50万円の支払いを命じました。

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