Case497 脊髄空洞症による療養から復帰した直後の労働者に対して強い口調で叱責したことがパワーハラスメントに該当するとした事案・U銀行パワハラ事件・岡山地判平24.4.19労判1051.28
(事案の概要)
被告会社で勤務していた原告労働者は、脊髄空洞症等による入院、療養を経て職場復帰しました。原告は、後に脊髄空洞症の後遺症により身体障害者4級と認定されています。
被告上司は、原告のミスに対し不満を募らせ、「もうええ加減にせえ、ほんま。」「辞めてしまえ。足がけ引っ張るな。」「足引っ張るばあすんじゃったら、おらん方がええ。」「あほじゃねんかな、もう。普通じゃねえわ。あほうじゃ、そら。」「〇〇(同僚)以下」などと強い口調で叱責しました。
本件は、原告が会社及び被告上司に対して損害賠償請求するなどした事案です。
(判決の要旨)
判決は、被告上司は、ミスをした原告に対し、強い口調で、辞めてしまえ、(他人と比較して)〇〇以下だなどといった表現を用いて叱責していたことが認められ、それも1回限りではなく、頻繁に行っていたとしました。
そして、確かに原告が通常に比して仕事が遅く、役席に期待される水準の仕事ができていなかったとはいえるものの、本件で行われたような叱責は、健常者であっても精神的にかなりの負担を負うものであるところ、脊髄空洞症による療養復帰直後であり、かつ、同症状の後遺症等が存する原告にとっては、さらに精神的に厳しいものであったと考えられること、それについて被告上司が全くの無配慮であったことに照らすと、原告自身の問題を踏まえても、被告上司の行為はパワーハラスメントに該当するとし、被告らに対して慰謝料100万円の支払を命じました。
※控訴