Case507 医師をすべての臨床担当から外したことが病院の合理的な裁量の範囲を逸脱した違法な差別的処遇に当たるとされた事案・学校法人兵庫医科大学事件・大阪高判平22.12.17労判1024.37

(事案の概要)

 原告労働者は、15年以上勤務医としての他院で働き、平成2年から被告法人が設置する本件病院において耳鼻咽喉科の医師として勤務していました。

 しかし、法人は、平成6年1月から原告に本件病院の診察を一切担当させなくなりました。

 また、平成6年10月頃からは、学生の病院実習などの教育の担当もなくなりました。

 このような状況は、平成6年11月に被告教授が耳鼻咽喉科の診療部長となった後も変わりませんでした。

 本件病院は、医師を関連病院に派遣することもありましたが、平成11年11月からは原告には派遣の割当がなくなりました。

 原告が強く要求したところ、法人は、平成16年8月から原告に外来者の少ない月曜日の再診が割り当てられるようになりました。

 本件は、原告が法人及び被告教授に対して、被告教授が原告に不当に臨床の担当をさせなかったとして損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、法人は、原告が大学病院に勤務する医師としての資質に欠けると判断したのであれば、原告に対し、そのような問題点を具体的に指摘した上でその改善方を促し、一定の合理的な経過観察期間を経過してもなお資質上の問題点について改善が認められない場合は、その旨確認して解雇すべきところ、被告らが上記のような合理的な経過観察期間を設けた改善指導等を行って、その効果ないし結果を確認したなどの具体的事実は見当たらず、そうすると、被告らは、原告に対する具体的な改善指導を行わず、期間の定めのないまま、原告をいわば医師の生命ともいうべきすべての臨床担当から外し、その機会を全く与えない状態で雇用を継続したというものであって、およそ正当な雇用形態ということはできず、差別的な意図に基づく処遇であったものと断定せざるを得ないとしました。

 そして、被告らが、平成6年1月以降原告を本件病院におけるすべての臨床担当から外し、平成11年11月以降原告をすべての外部派遣の担当から外すものとしたことは、合理的な裁量の範囲を逸脱した違法な差別的処遇に当たるとし、被告らに対して慰謝料200万円の支払を命じました。

※確定

Follow me!