【解雇事件マニュアル】Q27退職扱いにも労基法19条1項が適用されるか
就業規則上の休職期間満了の効果として、休職期間満了が解雇事由とされていることもあれば、休職期間満了をもって自然退職したものと扱うなどとされていることもある。後者の退職扱いにも労基法19条1項による制限が適用されるのかが問題となる。
社会福祉法人県民厚生会ほか事件・静岡地判平26.7.9労判1105号57頁は、休職期間満了による退職処分について労基法19条1項を適用してこれを無効とした。ケー・アイ・エスほか事件(一審)・東京地判平28.6.15労判1189号156頁も、休職期間満了による退職扱いについて労基法19条1項を適用してこれを無効とした(もっとも、控訴審である東京高判平28.11.30労判1189号148頁は、業務起因性を否定して一審判決を取り消した。)。
エターナルキャスト事件・東京地判平29.3.13労判1189号129頁は、休職期間満了による退職扱いについて労基法19条1項の趣旨に照らして許されないとした。また、アイフル(旧ライフ)事件・大阪高判平24.12.13労判1072号55頁は、休職期間満了による退職扱いについて労基法19条1項を類推適用してこれを無効とした。
このように、裁判例は休職期間満了による退職扱いについても労基法19条1項を直接適用または類推適用して退職扱いを無効としている。
労基法19条1項は、解雇の理由を問わず適用されるため、退職扱いについても、休職期間満了に限られず広く労基法19条1項が直接適用または類推適用されることになるであろう(よくある例として、一定期間の無断欠勤を理由とする退職扱いなど。)。
出水商事事件・東京地判平27.3.13労判1128号84頁は、使用者が産休中の労働者を一方的に退職扱いとして退職通知を送付した行為について労基法19条1項及び育介法10条に違反する不法行為に当たるとした。