Case549 労働時間管理に使用していた手書きの紙を破棄したという会社の主張を認めず文書提出を命じた事案・對馬(文書提出命令・抗告)事件・東京高決令5.11.14労判1317.31
(事案の概要)
文書提出命令の事件です。
原告労働者ら2名は、被告会社に対して残業代請求訴訟を提起していました。
原告らは、原告らが出勤時、退勤時、休憩開始時、休憩終了時の都度手書きで時刻を記載した紙(本件文書)を会社が所持しており、民事訴訟法220条4号の除外事由に該当しないとして、文書提出命令の申立てを行いました。
会社は、当初本件文書を含む資料一式は税理士が保管している旨を説明していましたが、本件申立て後は、本件文書は給与明細書を発行した後は都度廃棄しており、本件文書を所持していないと主張しました。
(決定の要旨)
決定は、会社はタイムカードを導入しておらず、労働時間を管理する文書としては本件文書しかないのであるから、「労働時間に関する重要な書類」(労基法109条)として、5年間の保存義務を負っており、違反した場合は罰金の罰則もあるから(労基法120条1号)、会社が所持している蓋然性が非常に高いといえ、破棄を裏付ける客観的な資料等は一切提出されていないなどとして、会社が本件文書を所持しているものとしてその提出を命じました。