【求人詐欺】Case594 求人票の記載から期間の定めのない労働契約が締結されたとして雇用契約書による有期雇用への変更が無効とされた事案・マンダイディライト事件・大津地判令6.12.20労判1329.36【労働弁護士が選ぶ今日の労働裁判例】

【事案の概要】

原告労働者(X)が、人材派遣業を営む被告(Y社)に対し、労働契約上の地位確認等を求めた事案です。

Xは令和5年6月19日に「正社員」「期間の定めなし」「試用期間あり期間2か月間」というハローワークの求人票(本件求人票)を見てY社に応募し、翌日にはウェブ面接と採用内定通知を受け、同年7月1日を就業開始日と承諾しました。その後、XとY社は同年6月21日に労働契約書(本件契約書)を作成しましたが、本件契約書には契約期間が2か月間と記載されていました。

Y社は、同年9月1日以降、契約期間満了により労働契約はないとしてXの就労を拒否しました。

XとY社との雇用契約が無期雇用なのか有期雇用なのかが争われました。

【判決の要旨】

裁判所は、本件求人票に労働契約の要素が具体的に特定され、内定通知で勤務開始日が伝えられXがこれを了承したことから、内定通知の時点でXとY社との間に就労開始日を令和5年7月1日とする始期付労働契約(本件始期付契約)が成立したと判断しました。

Y社が労働契約書作成時まで雇用期間について説明しなかったため、本件始期付契約は求人票記載の「試用期間を2か月とし、雇用期間は定めがない」内容で成立したと認定しました。

本件契約書の作成は、本件始期付契約における労働条件の変更合意と解釈され、雇用期間を期間の定めのないものから2か月に変更する合意は「賃金等の変更に比肩するような重要な労働条件の変更」に当たると判示されました。裁判所は、Xに説明し承諾を得たとするY社の主張について、不利益変更に対する具体的な説得の供述がないことなどから信用できないとし、本件契約書の作成はXの自由な意思に基づくものとは認め難く、雇用期間の変更は有効でないと結論付けました。

また、Y社がXに対する解雇の意思表示をしていないと認められるため、XとY社間の労働契約は現在も継続していると判断されました。

※控訴後和解

Follow me!