【退職金】Case595 退職年金規程の廃止手続がされていないとして有期雇用労働者に退職年金規程の適用があるとした事案・日本サーファクタント工業事件・東京高判令6.8.28労判1329.52【労働弁護士が選ぶ今日の労働裁判例】
【事案の概要】
本件は、原告労働者Xが、被告Y社に対して、複数の請求を行った事案ですが、そのうち退職年金請求について取り上げます。
Xは2006年7月からY社の契約社員として雇用され、有期労働契約を繰り返し更新しながら2019年3月20日に定年退職しました。その後、2019年3月21日以降はY社に定年後再雇用されました。
Y社には退職年金規程がありましたが、Y社は、当該規程は2011年に廃止されたとしてXに退職年金を支給しませんでした。
その他、退職一時金に関する労契法旧20条の主張などは排斥されています。
【判決の要旨】
判決は、Y社の退職年金規程は、就業規則の廃止手続きがなされておらず存続すると判断しました。
また、当該規程は、一部の者を除き、契約社員を含めてY社に在職するすべての従業員に適用されるとしました。裁判所は、Xが入社以来定年退職に至るまで途切れることなく契約更新されており、勤続年数を入社から満55歳に至るまで通算するのが相当であることから、退職年金の加入資格および支給要件を満たすと認めました。
そして、Xに規程を適用し、基本的な月額である1万4000円を限度としてXの請求に理由があると判断しました。
※上告棄却・不受理により確定