【残業代】Case651 休日振替の成立を否定し早出残業や休日出勤の割増賃金請求を認めた事案・ヴィドウ事件・東京地判令和6年9月17日労判1340号80頁
【事案の概要】
原告労働者Xは、予約制のパーソナルトレーニングジムを経営する被告Y社と労働契約を締結し、トレーナーとして勤務し、後に退職しました。
Xは、ジムのオープン時刻や所定の出勤時刻より前であっても、顧客の予約に合わせてトレーニング指導を行っていました。また、休日である日曜日に出勤することもありました。
Xは、在職中に、始業時刻前の早出出勤や休日出勤などを行っていたにもかかわらず、適正な割増賃金が支払われていないとして、未払割増賃金等の支払いを求めて提訴しました。
主な争点は、①始業時刻前の時間の労働時間性(早出残業の成否)、②Y社が主張する休日振替の有効性、③Y社がXに交付した50万円の未払賃金への充当の可否、④付加金の支払いの是非です。
【判決の要旨】
裁判所は、以下の通りXの請求を大筋で認め、Y社に対し未払割増賃金約600万円および同額の付加金の支払いを命じました。
1. 労働時間(早出残業)
裁判所は、労働基準法上の労働時間について、「労働基準法32条の労働時間は,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,上記の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」という最高裁の法理を引用したうえ、ジムのオープン時刻や所定の出勤時刻より前であっても、顧客の予約に合わせてトレーニング指導を行っていた時間については、予約表で管理され代表者も把握していたことから、Y社の黙示の指揮命令下にあったとして労働時間と認めました。
2. 休日出勤と休日振替
Y社は、日曜日の出勤について、シフト表で振替休日を指定していたため休日労働には当たらない(休日振替が成立している)と主張しました。
裁判所は、「休日の振替が認められるためには,労働者に対し,あらかじめ振替休日の日を指定し,特定の休日を労働日とする旨を通知することを要すると解される」としたうえ、Y社が主張するシフト表には「公休」等の記載があるだけで、振替休日の日が指定されたと理解しうる記載が見当たらず、また「公休」の記載がどの労働日の振替休日かを示す記載もなかったことから、「シフト表に基づく被告(Y社)の休日の取扱いは,休日の振替に関する要件を満たすものとは認められない」と判断されました。
3. 付加金
Y社はタイムカード等によりXが固定残業代を超える長時間労働を行っている事実を認識していながら支払いを怠っていました。また、Y社は過去にも複数の従業員から同種の訴訟を起こされ敗訴や和解をしていたにもかかわらず、改善の形跡が見られないことから、「被告(Y社)による時間外等割増賃金の不払に酌むべき事情は認められない」として、未払額と同額の付加金の支払いが命じられました。
※控訴

