Case39 准教授から事務職員への職種変更命令を無効とした事案・学校法人日通学園(大学准教授)事件・東京高判令3.2.24
(事案の概要)
大学准教授として勤務していた原告は、自律神経機能不全症の診断で休職した後、復職可能の診断書を提出して大学に復職を求めましたが、3回にわたり休職の延長を命じられたのち、事務職員として復職させる旨の職種変更命令を受けました。
本件は、原告が職種限定契約を主張し、准教授たる地位の確認や、復職拒否された以降の未払賃金(准教授を前提とする復職後の差額賃金を含む。)、e-Rad(府省共通研究開発管理システム。本システム。)の原告の職名等の変更等のための通知、慰謝料の支払い等を求めた事案です。
(判決の要旨)
一審判決(千葉地判令2.3.25労判1243.101)
判決は、教育職員の採用が事務職員と別枠でなされ、業務内容も異なること、教育職員から事務職員への職種変更の例は過去に同意を得てなされた1件のみであったことなどから、原告と法人との間の契約は教育職員の職種限定契約であるとしました。
また、休職事由が消滅した後、一定の合理的な期間を経ても学園理事長が復職命令を発令しない場合には、労働者は学園理事長の復職命令がなくても当然復職するものと解するのが相当であるとしたうえ、原告の言動からみて3回の休職延長命令の時点では原告が出勤できる状態ではなかったが、職種変更命令の時点では准教授として復職させるべきであったとして、職種変更命令を無効としました。
判決は、准教授たる地位の確認及び復職後の差額賃金(准教授を前提とする)の支払いは認めましたが、本システムへの通知、慰謝料等は認めませんでした。
控訴審判決
控訴審も、准教授たる地位の確認及び復職後の差額賃金(准教授を前提とする)の支払いを認めたほか、本システム上に研究者としての職位等が誤って登録されている場合、公的な競争的研究資金の応募に支障が生じかねず、結果として、研究それ自体にも重大な支障が生じる恐れがあるとして、研究者としての人格権に基づき本システムの登録を正確な内容に訂正する手続をとることを求めることができるとし、被告に本システムへの通知を命じました。