整理解雇の4要件=4STEP
目次
1 整理解雇とは
整理解雇とは、経営悪化など、会社等の使用者側に理由がある解雇のことをいいます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で会社の売上が減少したことなどを理由とする解雇は、整理解雇に当たります。
2 整理解雇の4要件
整理解雇も解雇権濫用法理(労働契約法16条)の適用を受けるので、正当な理由がない整理解雇は無効になります。
整理解雇は、労働者に落ち度がないのに、専ら会社側の都合で行われてしまうため、判例上、その有効性は、以下の4つの要件(要素)から厳しく判断されています。
①人員削減が本当に必要か(人員削減の必要性)
②解雇以外の手段を尽くしたか(解雇回避努力)
③解雇する労働者の人選が合理的か(人選の合理性)
④労働者に対する十分な説明があったか(手続の妥当性)
3 整理解雇の4要件は「4STEP」で覚えよう!
整理解雇の4要件は、そのまま覚えようとすると理解が困難です。
私は、整理解雇の4要件は、並列な要件(要素)ではなく、整理解雇に必要な「4STEP」であると考えています。
裁判例も、概ね①→②→③→④の順番に検討しており、①人員削減の必要性が認められないような事案では、②~④のSTEPに進むことなく整理解雇は無効であると判断されることもあります。
では、①~④のSTEPを順番に見ていきましょう。
STEP① 人員削減の必要性
整理解雇の多くは、経営悪化等の理由により人員(ないし人件費)削減が必要だから行うものです。
したがって、人員削減の必要性があることが大前提となっており、人員削減の必要性がないのであれば整理解雇を正当化する理由はなく、当然に整理解雇は無効です。
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STEP② 解雇回避努力
人員削減の必要性があったとしても、人員ないし人件費を削減する方法は解雇以外にも色々あります。
例えば、役員報酬を減らしたり、残業を削減したり、新規採用を控えたり、配置転換や出向を命じたり、一時的に休業や給与減額をしたり、希望退職者を募ったりという方法が考えられます。
解雇は会社が一方的に雇用契約を終了させてしまう最終手段です。会社は、整理解雇を行う前に、上記のような方法により解雇を回避する努力を十分に尽くす必要があります。
解雇回避努力を十分に行わずにした整理解雇は無効です。
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STEP③ 人選の合理性
解雇回避努力を尽くしてもやむを得ず整理解雇を行わなければならない場合、どの労働者を整理解雇の対象にするかを決める必要があります。
このとき、会社が「あいつは会社に意見を言うから解雇対象にしよう。」と恣意的に整理解雇の対象者を決めることは許されません。
会社は、➊合理的な人選基準を定めて、➋人選基準を公平に適用して整理解雇の対象者を決める必要があります。
人選基準が不合理な場合や、人選基準に反して整理解雇の対象者を決定したような場合は、整理解雇は無効です。
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STEP④ 手続の妥当性
最後に、STEP①~③について会社が労働者に黙って検討を進め、整理解雇になったという結果だけを突然労働者に伝えても、労働者は納得できません。
会社は、整理解雇を行う前に、人員削減の必要性があること、解雇回避努力の内容、人選基準等について、労働者や労働組合に対して十分に説明し、その納得を得られるよう誠実に協議する必要があります。
そのような手続を経ずに行われた整理解雇は無効になることがあります。
このように、整理解雇の4STEPは、①そもそも人員削減の必要性があるかという広く抽象的な検討から、②、③、④と徐々に狭く具体的な検討に入っていくようになっています。図にすると以下のようなイメージです。これは、整理解雇を行うために使用者が経るべき思考過程と一緒です。