Case21 黙示の職種限定合意を認め配置命令を無効とした事案・学校法人国際医療福祉大学(仮処分)事件・宇都宮地決令2.12.10労判1240.23
(事案の概要)
本件労働者は、病院の薬剤部責任者と大学の薬学部教授を兼任する者として本件法人に雇用されていましたが、本件法人は、本件労働者のハラスメント行為を理由として本件労働者の薬学部教授の地位を解任し、病院の薬剤師として勤務することを命じる本件配転命令を行いました。
本件労働者は、職種限定合意を主張し、薬学部教授の地位を仮に定めることを求める本件仮処分申立後、異議を留保しつつ本件配転命令に従っていましたが、本件仮処分手続中にもかかわらず、本件法人の担当者から就業場所を病院、業務内容を薬剤師に変更する旨の雇用契約書兼労働条件通知書に署名・押印を求められ、これに応じました。本件法人は、これをもって配置転換の合意が成立したと主張しました(本件配転合意)。
(判決の要旨)
判決は、明示の職種限定合意はなされていないものの、募集採用過程や業務内容から、本件法人は本件労働者の専門性・学術性の高さに着目した上、余人をもっては容易に代えがたい人材として雇用契約を締結し薬学部教授としての職位を付与したのであって、その地位は他の職種との間に互換性を有しないとして、黙示の職種限定合意が成立していたとしました。そして、職種限定合意に反する本件配転命令を無効としました。
また、配転命令に異議を留保していた中での本件配転合意について、山梨県民信用組合事件判決の所謂自由な意思論を用いて、これを無効としました。
そして、保全の必要性について、研究活動等に重大な支障が生じることが高度の蓋然性をもって予測されるとして、本件労働者が薬学部教授の地位にあることを仮に定める決定をしました。