Case30 工場内での落下事故につき会社の安全配慮義務違反を認めた事案・山崎工業事件・静岡地沼津支判令2.2.25労判1244.94
(事案の概要)
原告は、会社の鋳造工場において製品(高さ1m65cm)の上でエアブロー作業をしていたところ、後方から走行してきたクレーンのフック(高さ3m)が原告の左肩背部に当たり製品から落下する事故で、左足第4指骨折及び右足関節捻挫の傷害を負いました(後遺障害等級12級として労災認定。本件事故1)。
その後、会社の従業員が鋳造工場において製品(高さ1m)の上でしゃがんだ姿勢で高周波グラインダーで研削作業をしていたところ、原告が当該従業員の身体を両腕で押し、これに驚いた当該従業員がしりもちをつき、砥石が高速回転しているグラインダーを落とす事故があり(本件事故2)、会社は本件事故2を理由に原告を解雇しました。
本件は、原告が解雇の効力を争うとともに、本件事故1にかかる安全配慮義務違反による損害賠償請求をした事案です。
(判決の要旨)
判決は、本件事故2の重大性やその後の原告の態度等から、原告に対する解雇を有効としました。
一方、本件事故1について、会社はクレーン等安全規則の規定を踏まえ、クレーンを用いて作業を行うときは、クレーンの運転について一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること(同規則25条1項本文)及びクレーンの運転の業務に労働者を就かせるときは、その労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行うこと(同規則21条1項)などが求められているとしたうえ、会社の安全配慮義務違反を認めました。
原告は残業代請求もしていましたが、認められませんでした。
※控訴後和解成立