Case40 嘱託職員に家族手当及び住宅手当を支給しないことが不合理な格差に当たるとした事案・科学飼料研究所事件・神戸地姫路支判令3.3.22労判1242.5
(事案の概要)
本件は、有期雇用の嘱託職員ら(定年後再雇用も含む)及び無期雇用の年俸社員らが、会社に対して、年俸社員以外の無期雇用社員との間で、賞与、家族手当、住宅手当および昼食手当に相違があることが、労契法旧20条(年俸社員については類推適用)等に違反すると主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案です。
(判決の要旨)
1 嘱託職員ら
判決は、比較対象者を一般職コース社員とし、嘱託職員と一般職コース社員では、職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があり、人材活用の仕組みが大きく異なっていたと評価したうえ、それぞれの手当等について以下のように判断しました。
⑴ 賞与
一般コース社員に対する賞与は、労働意欲の向上、人材確保・定着を図る趣旨によるところ、嘱託社員との間の上記相違、再雇用者を除く嘱託社員の年間支給額と比較して一般コース社員の基本給が低いこと、社員登用試験があり嘱託社員としての雇用が固定されたものではないこと等から、賞与にかかる労働条件の相違は不合理でないとしました。
⑵ 家族手当・住宅手当
これらの手当は、支給要件や金額に照らすと従業員の生活費を補助する趣旨であるところ、扶養者がいることで日常の生活費が増加することや、住居を持つことで住居費を要することになることは相違ないから、嘱託職員にこれらをまったく支給しないことは不合理であるとし、差額分の損害を認めました。
⑶ 昼食手当
昼食手当は、名称にかかわらず月額給与額を調整する趣旨で支給されていたところ、賞与で述べた理由から、昼食手当にかかる労働条件の相違は不合理でないとしました。
2 年俸社員ら
判決は、労契法旧20条の文言のほか、雇止めに対する不安がないなどの点で有期契約労働者と無期契約労働者では雇用契約上の地位が異なっていること等に鑑みると、無期契約労働者間の労働条件の相違について、同条を類推適用することは困難であるなどとし、請求を棄却しました。
※控訴