Case45 使用者に一方的な評価決定権限がないとして年俸減額を無効とした事案・日本システム開発研究所事件・東京高判平20.4.9労判959.6【百選10版33】

(事案の概要)

 年俸制の研究職員の賃金減額事案です。被告では、年俸額について、就業規則に定めはないものの、個人業績評価と非年俸者の改定基準表を参考に役員が目安額を提示したうえで、役員2名と当人の個別交渉を経て、年間支給額を決定してきました。

 被告は、平成17年に経費削減策の中で賃金体系を変更し、定性評価を廃止して、役員が作成した定量評価で個人業績評価を行うこととしました。

 被告は、年俸合意に至らなかった原告ら4名について、一方的に減額支給しました(X1は年俸1200万円→752万9000円、X2は年俸1000万円→660万3258円、X3は年俸1100万円→951万9500円、X4は年俸800万円→699万3760円に減額)。

 原告らは、賃金減額は無効であるとして、従前の賃金との差額分を請求しました。

 非年俸者であるX5の賞与請求等もありますが、割愛します。

(判決の要旨)

 判決は、年俸制において、使用者と労働者との間で新年度の賃金額について合意が成立しない場合には、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるというべきで、この要件が満たされていない場合、労働基準法15条、89条の趣旨に照らし、特別の事情が認められない限り、使用者に一方的な評価決定権限はないと解するのが相当としました。

 また、年俸が各年度決定されていたことなどから、交渉期限の次年度への延期が合意されるなどの特段の事情の認められない限り、当該年度中に年俸額について合意が成立しなかった場合には、前年度の年俸額をもって、次年度の年俸額とすることが確定するものと解すべきとし、年度末が経過した期間について、原告らの請求を認容しました。

 Blog記事「一方的な賃金減額のパターン」の「4 賃金査定による賃金減額」のパターンに該当する裁判例です。

※上告

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