一方的な賃金減額のパターン

目次

0 はじめに

 会社から一方的に賃金減額されたけど、これって無効じゃないの?

 一言に賃金減額といっても、その根拠によって有効性の要件が異なります。

 この記事では、賃金減額のパターン別の有効要件について簡単に解説します。会社から賃金減額を告げられたとき、どのパターンに当てはまるのか区別できるようにしておきましょう。

1 役職・職位の降格に伴う賃金減額

 役職・職位の降格に伴って賃金が減額されるパターンです。例えば、「部長から課長に降格したから役職手当が減額になる。」「部長の基本給から課長の基本給になる。」ような場合です。

 このような賃金減額を行うためには、就業規則等の根拠規程が必要になります。すなわち、役職・職位と賃金が紐づいていることが就業規則等に明記されていることが必要です。

 上記の例でいうと、部長の場合は役職手当(ないし基本給)がいくら、課長の場合は役職手当(ないし基本給)がいくら、と就業規則等に明記され、それが労働契約の内容になっていることが必要です。

 就業規則等に根拠規程がない場合、賃金減額は無効です。

 また、就業規則等に賃金減額の根拠規程がある場合でも、そもそもの降格が無効であれば降格に伴う賃金減額も無効です。

 降格が無効である場合として、職種限定契約であり降格が許されない場合や、降格が人事権の濫用に当たる場合などが考えられます。

2 職務・役割等級制度上の等級の引下げによる賃金減額

 就業規則等によって、職務・役割等級に応じて賃金テーブルが定められており、職務・役割等級を引き下げることにより賃金減額されることがあります。このような職務・役割等級制度は、職務・役割と賃金の連動性の程度など会社によって様々ですが、賃金減額の有効性は概ね以下のように判断されています。

 まず、等級の引下げ及び賃金減額について、それぞれ就業規則等の根拠規程が必要になります。

 等級の引下げ及び賃金減額について、就業規則等の根拠規程がない場合、賃金減額は無効です。

 また、就業規則等に等級の引下げ及び賃金減額の根拠規程がある場合でも、等級引下げが権利濫用に当たる場合には、賃金減額は無効です。

3 賃金査定による賃金減額

 賃金が固定額とされておらず、就業規則等によって、査定によって賃金額を決定する旨が定められ、当該定めに基づいて賃金減額がされることがあります。その典型例が年俸制です。

 賃金査定による賃金減額を行うためには、まず賃金査定について就業規則等の根拠規程が必要になります。

 賃金査定について就業規則等の根拠規程がない場合、賃金減額は無効です。

 また、就業規則等に賃金査定の根拠規程がある場合でも、査定が権利濫用に当たる場合には、賃金減額は無効です。

4 就業規則変更による賃金減額

 就業規則の変更により賃金減額がされることがあります。

 これは就業規則の不利益変更の問題です。就業規則の不利益変更が有効であるためには、就業規則変更が合理的であること及び新就業規則が労働者に周知されていることが必要です。

5 まとめ

 以上をまとめると、図のようになります。概ね、①賃金減額の根拠が就業規則等により労働契約の内容となっているか、②賃金減額が権利濫用に当たらないかの2段階の検討が必要になります。なお、実際の事案では、これらのパターンが複合的に問題になることがあります。

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