Case49 育休明けの役割グレードの引下げ及び役割報酬の減額を無効とした事案・コナミデジタルエンタテインメント事件・東京高判平23.12.27労判1042.15

(事案の概要)

 原告は、育児休業後に復職したところ、担当職務の変更、これに伴う役割グレードの引き下げ、これに伴う報酬グレードの引下げによる役割報酬の減額(550万円→500万円)を受け、成果報酬をゼロと査定されたことにより、年俸が復職前の640万円から520万円に引き下げられました。

 本件は、原告が、一連の人事措置は妊娠・出産をして育児休業等を取得した女性に対する、差別ないし偏見に基づくもので人事権の濫用に当たるなどと主張し、降格減給前後の差額給与や慰謝料の支払等を求めた事案です。

 役割グレードと報酬グレード及び役割報酬額とを連動させることについて、被告の就業規則や年俸規程に明示的な定めはなく、役割グレードの内容等を説明した手引きがあるのみでした。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、役割グレードの引下げ及び役割報酬の減額に違法はないとしました。

 一方、成果報酬をゼロとした点は違法であるとして、慰謝料30万円と弁護士費用5万円を認容しました。

控訴審判決

 控訴審は、役割報酬の引下げは、労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額を不利益に変更するものであるから、就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく、労働者の個別の同意もないまま、使用者の一方的な行為によって行うことは許されないというべきであり、役割グレードの変更についても、そのような役割報酬の減額と連動するものとして行われるものである以上、労働者の個別の同意を得ることなく、使用者の一方的な行為によって行うことは、同じく許されないというべきであり、それが担当職務の変更を伴うものであっても、人事権の濫用として許されないとし、原告に対する役割グレードの変更及び役割報酬の減額を違法無効としました。

 また、被告の成果報酬は、翌年度において期待することのできる業務実績を金銭評価するものであって、いわゆる見込で支払われる見込報酬の一種であるとしました。そして、成果報酬ゼロ査定は、育休等を取得したことを理由に不利益な取り扱いをすることに帰着するから、雇用機会均等法や育児・介護休業法の趣旨に反する結果になるとしたうえ、被告は、成果報酬の査定に当たり、原告が育休等を取得したことを合理的な限度を超えて不利益に取り扱うことがないよう、前年度の評価を据え置いたり、同様の役割グレードの者の成果報酬査定の平均値を使用したり、合理的な範囲内で仮の査定を行うなど、適切な方法を採用することによって、育休等を取得した者の不利益を可能な限り回避するための措置をとるべき義務があるとし、被告が機械的に成果報酬をゼロと査定したことは人事権の濫用として違法であるとし、慰謝料30万円及び弁護士費用30万円の支払を認めました。

 Blog記事「一方的な賃金減額のパターン」でいうと、「3 職務・役割等級制度上の等級の引下げによる賃金減額」のパターンに該当する裁判例といえると思います。

※ 確定

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