Case121 営業担当取締役からの4度の降格処分及びこれに伴う4度の減給処分がいずれも人事権の濫用に当たり無効とされた事案・ハネウェル・ターボチャージング・システムズ・ジャパン事件・東京地判平16.6.30労判879.37

(事案の概要)

 被告会社は、原告労働者を平成12年4月に営業担当取締役(年収1400万円)に任命しましたが、同年9月にOEM担当営業部長兼IAM担当営業部長に、同年10月にはIAM担当営業部長に降格させました(第1次降格処分)。

 会社は、平成13年1月に管理職人事制度を施行し、これにより原告の年俸を1417万円としました。会社は、同年10月、IAM営業部の販売実績の大幅な未達等を理由に原告を営業部主管(課長職)に降格させ(第2次降格処分)、コスト削減プロジェクト等の業務に従事するよう命じました。

 会社は、平成14年1月に管理職人事制度を改訂し、原告を営業部専門職(プロジェクト担当)に任命し、年俸を1200万円に減給しました(第1次減給処分)。

 また、同年4月、会社は、プロジェクトの目標未達等を理由に、原告に翻訳の業務を命じ(第3次降格処分)、それに伴い原告の年俸を1000万円に減給しました(第2次減給処分)。

 さらに、同年12月に原告が改訂管理職人事制度に定める専門職の定年年齢に達したため、会社は平成15年1月、原告に試作管理課の現業職を命じ(第4次降格処分)、年収を約643万円に減給しました(第3次減給処分)。

 さらに、平成15年5月、会社は原告に対し、他社営業所で業務に従事することを命じ、月額給与を約54万円から約49万円に減給しました(第4次減給処分)。

 原告は、各降格処分及び各減給処分の無効を主張し、差額賃金や慰謝料の支払いを求めました。

(判決の要旨)

⑴ 第1次降格処分

 判決は、原告が営業担当取締役に任命されてから第1次降格処分まで僅か6か月であり、この間原告の営業成績に問題がなく、特段の事情もないことから、第1次降格処分は人事権を濫用したものであり無効としました。

⑵ 第2次降格処分

 判決は、IAM営業部に販売実績の大幅な未達成があったものの、IAM部門は平成11年12月末に営業不振から廃止されていた部署であり、当初から業務改善が望みにくかった部署であったこと、第2次降格処分は無効な第1次降格処分を前提とするものであることから、第2次降格処分も人事権の濫用に当たり無効としました。

⑶ 第3次降格処分

 判決は、会社の原告に対するプロジェクトに対する貢献度の評価はいささか厳しすぎること、原告が営業職に職種限定されていたこと、第3次降格処分は無効な第1次降格処分及び第2次降格処分を前提とするものであることから、第3次降格処分も人事権の濫用に当たり無効としました。

⑷ 第4次降格処分

 判決は、原告が営業職に職種限定されていたこと、第4次降格処分は無効な第1次降格処分ないし第3次降格処分を前提とするものであることから、第4次降格処分も人事権の濫用に当たり無効としました。

⑸ 各減給処分

 判決は、各減給処分は、無効な各降格処分に伴うものであり、当然に無効であるとしました。

⑹ 慰謝料

 判決は、各降格処分及び各減給処分は違法であり何ら合理的根拠がないとして、慰謝料100万円を認めました。

※控訴

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