Case155 労働者の申告により就労翌日に給与を受け取れる即給サービス利用手数料を給与から天引きしたことが全額払い原則に反するとされた事案・凸版物流・フルキャスト事件・東京高判平30.2.7労判1183.39
(事案の概要)
原告労働者は、人材紹介・派遣会社であるB社に登録し、日雇派遣労働者としてA社に派遣されていました。
B社では、派遣労働者の申告により、就労した翌日に給与を受け取れる即給サービスを提供していましたが、即給サービスを利用すると振込手数料が給与から天引きされていました。
本件は、原告が振込手数料の天引きが労基法24条1項の全額払い原則に反するとして、B社に対して天引きされた給与の支払い等を求めた事案です。B社は即給サービスにおける給与と振込手数料の相殺は労働者の同意により行っていたと主張しました。
原告は、派遣法違反等を主張しA社及びB社に対して損害賠償請求もしましたが割愛します(B社が原告に意図的に仕事を紹介しない嫌がらせをしたことについてのみ慰謝料10万円を認容)。
(判決の要旨)
判決は、>日新製鋼事件判決を引用し、B社が賃金と振込手数料を相殺するためには、労働者の同意が自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在しなければならないとしたうえ、本件ではB社は派遣労働者らに対して即給サービスの利用を誘導しており、派遣労働者らは不本意ながら即給サービスを利用せざるを得ない立場にあるなどとして、上記場合には当たらないとして、賃金から振込手数料を天引きすることは労基法24条1項に違反するとして原告の請求を認めました。
※上告受理申立