Case202 研修医の研修期間終了後に使用者の経営する病院で勤務しない場合には研修期間中に支給した補給金を返還する旨の研修規程を労基法16条に反し無効とした事案・ 徳島健康生活協同組合事件・高松高判平15.3.14労判849.90

(事案の概要)

 原告協同組合が、被告労働者に対して、研修期間中に支給した補給金の返還を求めた事案です。

 被告労働者は、協同組合に医師として採用された後、研修医として訴外A病院で2年5か月間、眼科の専門研修を受けました。協同組合は、研修規程に基づき、当該研修期間中に被告労働者に対して引越し費用や一部給与等総額約411万円を補給しましたが、研修規程には「万一、研修終了後協同組合に勤務しない場合は、研修期間中協同組合より補給された一切の金品を、3か月以内に本人の責任で一括返済しなければならない」と定められていました。

 被告労働者が、研修期間が終了し、協同組合の病院に帰任した5か月後に退職したため、協同組合は被告労働者に対して、主位的に補給金の返還を求めるとともに、予備的に被告労働者が研修終了後に協同組合に勤務する義務に違反したとして損害賠償請求しました。

(判決の要旨)

 判決は、研修規程は、研修を受ける者が研修終了後協同組合において勤務することを、研修受講者に対する義務とするという内容を定める範囲では有効であるが、勤務しない場合の賠償額を予定している部分(研修期間中協同組合より支給された一切の金品を返還するという部分)は賠償予定を禁止する労基法16条に反し無効であるとし、補給金の返還請求を棄却しました。

 また、損害賠償請求についても、被告労働者が5か月間協同組合で勤務したことから、研修終了後に協同組合に勤務する義務に違反したとはいえないとして棄却しました。

※確定

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