Case209 役職のない元労働者に対して競業避止義務に基づく歯科用合金スクラップ等の買取りの差止め請求が棄却された事案・アサヒプリテック事件・福岡地判平19.10.5労判956.91

(事案の概要)

 原告会社が、退職した被告労働者に対して、競業避止義務に基づく差止め及び損害賠償請求をした事案です。

 会社は、歯科用合金スクラップ等の買取り等を事業としていました。

 会社の就業規則には、「社員は、退職後2年以内の期間において、会社と同等の事業に直接又は間接を問わず従事してはならない」旨の競業避止条項がありました。

 会社は、退職した被告労働者が、会社の顧客である歯科医院等から歯科用合金スクラップの買取りをしたとして、被告労働者に対して、退職後2年間の取引先254軒との買取りの差止めと損害賠償を求めました。

(判決の要旨)

 判決は、競業避止義務を定める就業規則の効力は、競業避止条項を設ける合理的事情がない限りは、職業選択や営業の自由に対する侵害として、公序良俗に反し無効となるとしました。

 そして、①顧客情報等の秘密性に乏しく、会社が被告労働者に対し競業避止を求める利益が小さいこと、②競業避止の対象となる取引の範囲が広範で、期間も長期に及び、職業選択の自由等に対する侵害の程度が大きいこと、③被告労働者が役職等を有しておらず、原告従業員に対し強い影響力を有する地位等にあったとはいえないこと、④代替措置がないこと等から、競業避止条項を設ける合理的事情は認められないとして、競業避止条項を公序良俗に反し無効とし、会社の請求を棄却しました。

※控訴

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