Case251 整理解雇後にアメリカの会社に就職しアメリカに居住していることをもって被告会社における就労の意思を喪失したとはいえないとされた事案・ニューアート・テクノロジー事件・東京地判令4.3.16
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社で民泊に関するプロジェクトの責任者でした。会社は、原告に対して、雇用契約解除合意書と題する書面を送付し署名を求めました。同書面には、契約解除の理由として「原告が所定の期限に業務を完了することができないことが続いたことによる現在のプロジェクトチームの解散と、その影響もあり業績悪化が著しいこと」と記載されていました。
原告が退職を拒否したところ、会社は業績悪化と能力不足を理由に原告を解雇しました。
本件は、原告が会社に対して、解雇の無効を主張して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。
原告は、本件解雇後、アメリカの会社に就職しアメリカに居住していたことから、原告が被告会社での就労の意思を喪失したかが争点となりました。
また、原告は会社に対して残業代も請求し、管理監督者性が争点となりましたが否定されました。
(判決の要旨)
1 整理解雇及び能力不足解雇
会社は、訴訟終盤で決算書類の一部を提出しただけで、財務状況の全体を明らかにしていなかったところ、判決は、①人員削減の必要性があったとは認められないとしました。
②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの相当性についても何ら立証されず、判決は整理解雇を無効としました。
また、原告が納期を守らなかったことも、成果物が不十分であったことも認められず、能力不足を理由とする解雇も無効とされました。
2 就労意思の喪失
判決は、原告が日本にも住所を有していること、原告が1か月半程度は日本に居住しながらアメリカの会社の業務を行っていたこと、原告がアメリカの会社をすぐに退職することは可能であると証言していることなどから、原告が現在アメリカに居住していることをもって被告会社における就労の意思を喪失したとはいえないとしました。