Case263 最低賃金違反があることを知らずに締結された合意書による賃金債権放棄の効力が否定された事案・吉永自動車工業事件・大阪地判令4.4.28労判1285.93
(事案の概要)
原告労働者は、平成16年に大阪に所在する被告会社と時給6000円、所定労働時間8時間(時給換算で750円)で雇用契約を締結しました。
平成21年9月30日以降、原告の給与は大阪府の最低賃金を下回っていましたが、会社も原告もこれに気付いていませんでした。
原告は、退職に当たり清算条項を含む本件合意書に署名していました。
本件は、原告が会社に対して給与と最低賃金の差額を請求した事案です。本件合意書による賃金債権放棄の効力が争点になりました。
(判決の要旨)
判決は、賃金債権を放棄する旨の意思表示の効力を肯定するには、その意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していることを要するとし、本件合意書作成時、会社も原告も未払賃金の存在すら認識していなかったのであるから、本件合意書による賃金債権放棄は認められないとしまし、原告の請求を認めました。
※控訴