Case297 時間外労働時間は月75時間程であったものの出張の移動時間等を考慮して心疾患による死亡の業務起因性を認めた事案・MARUWA事件・名古屋地判令4.8.26
(事案の概要)
急性心筋梗塞により死亡した本件労働者の遺族である原告らが、被告会社に対して損害賠償請求した事案です。
本件労働者の時間外労働は、発症前1か月が69時間59分、発症前2か月が75時間32分でしたが、毎月数日間連続で宿泊付きの出張をすることを発症前1年前から続けており、出張の大部分を占める会社への移動時間は片道5時間程度でした。
(判決の要旨)
1 業務起因性
判決は、本件労働者の時間外労働時間は、労災認定基準の水準には至らないが、移動時間を労働時間に計上していない出張を毎月数日間繰り返しており、その期間も少なくとも発症前1年間は続いて疲労を蓄積させていたことからすれば、死亡と業務との間に因果関係を認めるのが相当であるとしました。
2 安全配慮義務違反
本件労働者が、管理本部の他の部署と一緒に本社1階フロアで勤務し、代表取締役の席とも近接していたことから、会社代表取締役及び本件労働者の上司に当たる管理本部長らは、本件労働者の長時間労働等を把握していたと認めることができるとして、会社の安全配慮義務違反を認めました。