Case347 視覚障害等を理由に教員に授業を担当させず学科事務のみを担当させることとする配転命令を無効とした事案・学校法人原田学園事件・広島高岡山支判平30.3.29労判1185.27
(事案の概要)
原告労働者は、被告法人が運営する本件短大で専任准教授として生物学などの複数の授業を担当していました。
法人は、原告の視覚障害等を理由に、新たに採用した教員に原告が行っていた授業を担当させ、原告には授業を担当させず、学科事務にみを担当させる本件職種変更命令をしました。これに伴い、法人は、原告の研究室をそれまでの研究室からキャリア支援室に移す本件研究室変更命令をしました。
本件は、原告が法人に対して、本件職種変更命令及び本件研究室変更命令の無効を主張し、キャリア支援室において学科事務に従事する労働契約上の就労義務のないことの確認等を求めた事案です。
なお、授業をする地位や研究室を使用する地位の確認請求は却下されました。
(判決の要旨)
判決は、本件職種変更命令及び本件研究室変更命令が全体として配転命令の性質を有するとしつつ、配転命令については、業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても不当な動機・目的をもってされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合には、無効になるとしました。
そのうえ、法人の主張する配置転換の必要性は授業内容の改善や補佐員による資格補助により解決できること、キャリア支援室において原告が担当する学科事務の内容が具体的に決まっていなかったこと、原告がキャリア支援室のみを研究室として使用することは困難であったことなどから、配転命令の業務上の必要性を否定すると同時に、原告に対し通常甘受すべき程度を著しく超える精神的苦痛を負わせるものであるとして、権利濫用に当たり無効であるとし、キャリア支援室において学科事務に従事する労働契約上の就労義務のないことの確認や慰謝料100万円の支払いを認めました。
※上告棄却により確定