Case361 前職を上回る待遇で被告会社に採用されるものと認識して最終面接前に前職場に退職届を提出した労働者の期待が法的保護に値するとされた事案・フォビジャパン事件・東京地判令3.6.29労経速2466.21

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社の関連会社であるA社で働いており、給与は月額34万円でした。A社から被告へは複数の従業員が転職していました。

 原告は、被告の代表取締役であるY1に対して被告に転職したい旨を告げたところ、Y1から、採用された場合の給与は月額39万円となること、採用にあたり被告の現場責任者ともう一人の代表取締役であるY2の面接を受けることになることを説明されました。また、Y1から勤務開始日の見通しを聞かれ、原告は希望する勤務開始日を告げました。

 原告は、被告の現場責任者の一次面接を受け、Y1から合格を告げられ、改めて勤務開始日を確認しました。

 原告は、A社から被告に転職していたEにメールしてA社の退職方法を尋ねたところ、Eから、A社に退職届を出すよう指示されたため、被告に確実に雇用されると期待してA社に退職届を提出しました。

 その後、原告はY2の二次面接を受けましたが、Y2は原告の採用に否定的でした。

 被告は、原告がA社を退職する2日前になって、原告に対して給与月額30万円で3か月の有期契約であれば採用すると提示し、原告はこれを断りました。

 本件は、原告が被告に対して期待権侵害を主張して損害賠償請求した事案です。

 原告は雇用契約の成立も主張しましたが否定されています。

(判決の要旨)

 判決は、上記経過から、被告会社から書面等による正式な採用の通知はなされておらず、原告においても採用に至るにはY2との面接が必要であることを認識していたと認められることを踏まえても、原告の期待は法的保護に値するものというべきであり、被告会社が、原告がA社を退職する直前(在籍最終日の2日前)になって、Y1の提示(給与月額39万円)説明を覆し、それまでの待遇(給与月額34万円)をも下回る条件(給与月額30万円)を提示したことは、原告の期待権を侵害するものであって不法行為を構成するとしました。

 損害としては、原告が再就職するまでの2か月間の給与額68万円から2割過失相殺した額が認められました。

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