【賃金減額】Case383 賃金減額への同意のうち既発生の賃金債権を放棄する部分が自由な意思に基づかないとして無効とされた事案・北海道国際航空事件・最判平15.12.18労判866.14
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社の社長付き担当部長として月額70万円の給与を得ていました。
会社は、経営不振により北海道議会から約20億円の支援を受け、自助努力として課長以上の役職者の賃金を減額が不可避となりました。会社は、7月の途中に賃金規程を改定して原告の給与を月初に遡って20%減額(月56万円)しました。原告は、異議を述べずに減額された賃金を受領しましたが、直前に、既に働いた分の賃金を月初に遡って減額することに異議を述べていました。
本件は、原告が会社に対して、賃金減額への同意は無効であると主張して差額賃金の支払い等を求めた事案です。
(判決の要旨)
一審及び控訴審判決
一審及び控訴審は、原告が減額に同意していたとして原告の請求を棄却しました。
最高裁判決
最高裁は、控訴審が認めた原告の賃金減額に対する同意の意思表示には、①既発生の賃金債権の一部を放棄する趣旨と、②以後発生する賃金債権を減額することに同意する趣旨が含まれることになるとしたうえ、原告の同意は②についてのみ効力を有し、①の効力は有しないとしました。
すなわち、①既発生の賃金債権を放棄する意思表示の効力を肯定するには、それが労働者の自由な意思に基づいてされたものであることが明確でなければならないところ、既発生の賃金債権の放棄の意思表示が原告の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したということはできないから、原告の同意は既発生の賃金債権を放棄する意思表示としての効力を有しないとしました。
また、②以後発生する賃金債権を減額する意思表示の効力は肯定したものの、新賃金規程には「月の途中において、基本賃金を変更または指定した場合は、当月分の基本賃金は新旧いずれか高額の基本賃金を支払う」旨定められているところ、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約はその部分については無効とされる(旧労基法93条、現労契法12条)ことから、原告の同意以降の7月分の賃金も減額の適用を受けないとしました。
以上より、減額が行われた月の1か月分の差額賃金が認容されました。

