Case394 周知された早期退職者優遇規程の内容と同一の退職合意が成立していたとして規程通りの増額退職金の支払請求が認められた事案・朝日広告社事件・大阪高判平11.4.27労判774.83

(事案の概要)

 被告会社は、人件費削減のため、平成6年度から毎年、取締役会で早期退職制度の対象年齢と増額退職金額等を決議し、その内容を早期退職者優遇規程として従業員に回覧していました。

 会社の取締役会は、平成9年度の早期退職制度として、対象年齢を49歳及び50歳、増額退職金を1000万円としました。また、これを除く47歳から54歳についても対象従業員に準じた優遇措置をするものとし、概ね800万円の増額退職金を支払うことを決議しました。

 しかし、早期退職者優遇規程には、49歳及び50歳を対象者として1000万円を支払う旨は明記されましたが、その他の年齢の者については「本件規定を準用する場合がある」と記載されただけでした。

 平成9年当時54歳であった原告労働者は、1000万円の増額退職金が支払われると考えて早期退職制度に応募して退職しましたが、増額退職金は800万円しか支払われませんでした。

 本件は、原告が会社に対して差額の200万円の支払いをもとめた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、原告は早期退職者優遇規程に記載された退職条件による合意退職を申込み、会社がこれを承諾したことにより、早期退職者優遇規程の内容と同一の退職合意が成立したとしました。

 そして、早期退職者優遇規程の中の、49歳及び50歳以外の年齢の者について「本件規定を準用する場合がある」とは、49歳及び50歳の者に適用される1000万円と同じ内容で適用する場合があるという意味であるとして、原告と会社との間には増額退職金を1000万円とする合意が成立しているとし、原告の請求を認めました。

※確定

Follow me!