Case444 水道局職員が初めて担当する業務について上司らに相談できないまま追い詰められて自殺したことにつき市の安全配慮義務違反が認められた事案・新潟市(市水道局)事件・新潟地判令4.11.24労判1290.18
(事案の概要)
本件労働者は、被告市が経営する水道局の職員として勤務していました。
組織再編により、本件労働者は、主査として平成19年4月から修繕単価表等の改定という経験がなく事務処理要領等も存在しない業務の主担当となりました。この業務は初めて担当する職員にとっては難しい業務でした。
本件労働者の直属の上司であるE係長は、同僚や部下に対して厳しい対応や頑なな対応を行う傾向や、時折強い口調で発言する傾向にあり、部署の中で職員同士が挨拶や相談をする雰囲気はありませんでした。本件労働者は真面目で温厚な性格で、E係長の自分に対する態度をいじめと感じ、E係長との接触をなるべく避け、業務の相談をできずにいました。
本件労働者は、4月中に一定の業務を終わらせる必要がありましたが、4月末時点でも業務を終わらせることができず、5月の連休明けに、E係長から叱責されることなどを恐れて精神的に追い詰められ自殺しました。
本件労働者の自殺について公務災害認定がされています。
本件は、本件労働者の遺族である原告らが、市に対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、E係長は、自分自身の本件労働者を含む他の職員に対する接し方が係内の雰囲気に及ぼす悪影響や、本件労働者との人間関係の悪化による悪影響によって、本件労働者が係内で発言しにくくなり、他の係職員に対し業務に関する質問がしにくくなっている係内のコミュニケーション上の問題を踏まえて、初めて担当する本件労働者にとって比較的難しい業務であった修繕単価表の改定業務に関し、①本件労働者による業務の進捗状況を積極的に確認し、進捗が思わしくない部分についてはE係長等が必要な指導を行う機会を設けるか、または、②E係長において部下への接し方を改善して係内のコミュニケーションを活性化させ、本件労働者がE係長等に対して積極的に質問しやすい環境を構築すべき注意義務があったが、E係長はこれを怠ったとして、市の安全配慮義務違反を認めました。
もっとも、本件労働者も、水道局の中堅職員で、係長として自らの苦境を解消するために可能であると考えられる対応を十分に採らなかったとして5割の過失相殺がなされました。
※確定