Case449 安全配慮義務の一般論を示し宿直中の労働者が強盗に殺害されたことについて会社の安全配慮義務違反を認めた最高裁判例・川義事件・最判昭59.4.10労判429.12
(事案の概要)
本件労働者は、毛皮卸売業を営む被告会社で宿直中、窃盗目的で侵入した元従業員に殺害されました。
本件は、本件労働者の両親である原告らが、会社に対して安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、一般論として、通常の場合、労働者は使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用しまたは使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているとし、安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであるとしました。
そして、本件では、宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかも知れない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もって右物的施設等と相まって労働者の生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があったとして、会社の安全配慮義務違反を認め、会社に賠償を命じました。