Case466 定年後再雇用の嘱託職員に年末年始及び夏期休暇を一切付与しないことが旧労契法20条の不合理な格差に当たるとされた事案・社会福祉法人紫雲会事件・東京高判令5.10.11労判1312.25
(事案の概要)
障害者支援施設を経営する被告法人で支援員として勤務していた原告労働者は、定年退職後、法人に有期の嘱託職員として定年後再雇用されました。
正規職員と嘱託職員とでは、嘱託職員に昇格が予定されていない以外には、職務内容や変更範囲について本質的な違いはありませんでした。
正規職員に適用される就業規則では、年末年始は休日とされ、4日間の夏季休暇が定められていました。嘱託社員に適用される就業規則でも、年末年始は休日されていましたが、法人は原告に年末年始の休みを与えませんでした。また、嘱託社員に適用される就業規則には夏期休暇の定めはありませんでした。
本件は、原告が法人に対して、年末年始及び夏期休暇について正規職員と差を設けることなどが不合理な格差(旧労契法20条)にあたるとして損害賠償請求した事案です。
なお、期末・勤勉手当、扶養手当に関する不合理性の主張は排斥されています。
(判決の要旨)
判決は、年末年始休暇及び夏期休暇は、所定休日や年次有給休暇とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、労働者が心身の回復を図る目的とともに、年越し行事や祖先を祀るお盆の行事等に合わせて帰省するなどの国民的な習慣や意識などを背景に、多くの労働者が休日として過ごす時期であることを考慮して付与されるものであり、このような休暇の趣旨は、正規職員にも嘱託職員にも等しく当てはまるものであることからすると、嘱託職員に対しその時期や日数を問わず一切付与しないことは不合理であるとしました。
そして、本来する必要のない勤務をせざるを得なかった日数及び有給休暇を使用した日数分の賃金相当額の損害を認めました。
※上告棄却・不受理により確定