Case479 上司が部下の有休申請を取り下げさせたことやその後の会社の対応が違法であったとして慰謝料合計120万円が認められた事案・日能研関西ほか事件・大阪高判平24.4.6労判1055.28
(事案の概要)
被告会社で塾講師として働く原告労働者は、平成20年6月24日から7日間のリフレッシュ休暇を取得することとなり、また同月6日の有給休暇の取得を申請しました。
そうしたところ、上司である被告課長は、原告に対してメールで「今月末にはリフレッシュ休暇をとる上に、6月6日まで有休をとるのでは、非常に心証が悪いと思いますが。どうしてもとらないといけない理由があるのでしょうか。」、面談で「こんなに休んで仕事がまわるなら、会社にとって必要ない人間じゃないのかと、必ず上はそう言うよ。その時、僕は否定しないよ。」「そんなに仕事が足りないなら、仕事をあげるから、6日に出社して仕事をしてくれ。」などと述べ、原告は有給申請を取り下げました(本件取下げ)。
また、被告課長は、原告が有休取得を予定していた6月6日、自分が担当する予定となっていた業務を原告に割り当てました(本件指示)。
原告は労働組合を通じて被告課長に抗議しました。
被告総務部長は、管理職らが出席する室長会議において、本件取下げについて「原告の主張は合法であるが、忙しい時期でもあるし、被告課長の言動は理解できる。」と被告課長を擁護する発言をしました。
被告社長は、全社員が参加する社員集会において、被告課長の行為について「あんなものは、私はパワハラだとは思わない。」「今後、有給休暇はよく考えてから取るように。」と発言しました。
本件は、上記各行為について、原告が会社、被告課長、被告総務部長及び被告社長に損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
1 被告課長の行為(本件取下げ及び本件指示)
判決は、原告の有休申請によって、法律上当然に有給休暇が成立しているにもかかわらず、被告課長は、原告がした本件有休申請に対し、上司として有給休暇の取得は望ましくないとする意思を表明し、これにより原告は有給休暇を享受することを妨げられたのであるから、被告課長の発言には違法性が認められるとしました。
また、本件指示についても、原告が有休の取得を取り下げた日において、何ら合理的理由がないのに自己の担当業務を原告に割り当てたことは原告に対する嫌がらせであり、原告の人格権を侵害する違法な行為であるとしまし、被告課長に対して慰謝料60万円の支払を命じました。
2 被告総務部長の行為
判決は、被告総務部長は、有給休暇申請について管理職の対応を指導すべき立場にあったにもかかわらず、あえて被告課長を擁護して原告にも問題があるかのような発言をしたものであるから、被告総務部長の発言は原告の名誉感情を害するものであるとして、慰謝料20万円の支払を命じました。
3 被告社長の行為
被告社長の発言についても、原告の名誉感情を侵害する意図の下に行われたものであるとして、慰謝料20万円の支払を命じました。
4 会社の責任
また、本件取下げ後の会社の対応も不十分であり、会社に職場環境整備義務違反があったとして、慰謝料20万円の支払を命じました。
※上告