Case498 労組法7条3号の支配介入の不当労働行為救済申立てについて組合員個人の申立適格を認めた最高裁判例・京都地労委(京都市交通局)事件・最判平16.7.12労判875.5
(事案の概要)
不当労働行為救済命令に対する取消訴訟です。
京都市交通局に勤める原告労働者は、労働組合の支部長でしたが、組合内には主流派と反主流派があり、原告は反主流派の中心的活動家でした。
交通局長は、原告を係長に昇任させる本件異動を命じました。係長は非組合員とされていたため、原告は本件異動により組合員資格および支部長の資格を失いました。
組合主流派は、本件異動は不当労働行為に当たらないとの見解をとりました。
原告は、本件異動が不当労働行為(労組法7条1号の不利益取扱、3号の支配介入)に当たるとして、個人で労働委員会に救済申立てをしました。
京都地労委は、労組法7条1号の不利益取扱について京都市の不当労働行為意思を否定し、また労組法7条3号の支配介入の不当労働行為については原則として労働者個人による救済申立ては認められないとして、原告の申立てを棄却(1号)、却下(3号)しました。
(判決の要旨)
一審及び控訴審判決
一審は、本件異動は相当異例の人事であるが、交通局長が原告の正当な組合活動を理由として本件異動を行ったと認めるには不十分であり、不当労働行為意思があったとまではいえないとして1号について地労委の判断を維持しました。
また、支配介入は労働組合に対する不当労働行為であるから、その救済申立ては労働組合が行うのが原則であり、労働者個人は組合自体が御用組合化しているような場合で、組合員個人の申立てが認められることにより組合の自主性や組織力が回復、維持されるような特段の事情がある場合にのみ申立てができるとして3号についても地労委の判断を維持しました。
控訴審も一審判決を維持しました。
最高裁判決
最高裁は、労働委員会による不当労働行為救済制度は、労働者の団結権及び団体行動権の保護を目的とし、これらの権利を侵害する使用者の一定の行為を不当労働行為として禁止した労組法7条の規定の実効性を担保するために設けられたのであり、その趣旨に照らせば、同条3号(支配介入)の不当労働行為を行ったことを理由として救済申立てをするについては、当該労働組合のほか、その組合員も申立て適格を有するとして、3号を却下した命令を取り消しました。