Case531 アイドルの労働者性が肯定され1回200万円の違約金条項が無効とされた事案・ファーストシンク事件・大阪地判令5.4.21労判1310.107

(事案の概要)

 原告会社が、会社がマネジメントする男性アイドルグループの元メンバーである被告に対して違約金請求をし、被告メンバーが会社に対して未払賃金請求の反訴をした事案です。

 被告メンバーが会社と締結した専属マネジメント契約(本件契約)には、被告メンバーが契約に違反した場合、違約金として1回につき200万円支払うとの規定がありました。

 会社は、被告メンバーが本件契約の解除を通知し、グループを脱退した後、被告メンバーに対して違約金1000万円から未払報酬11万円を相殺した989万円を請求しました。

 本件では、被告メンバーに労働者性が認められ、違約金条項が労基法16条に違反するかが主な争点となりました。

(賠償予定の禁止)

第十六 条使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

(判決の要旨)

 判決は、被告メンバーは、「社長」と呼ばれていたB(会社の役員でも従業員でもない)の指示通りに業務を遂行しなければ、1回につき違約金200万円を支払わされるという意識のもとで、スケジュールアプリに記入された仕事を遂行していたのであるから、これについて諾否の自由があったとは認められないとしました。

 また、被告メンバーは、会社の指揮監督の下、ある程度の時間的場所的拘束を受けつつ業務内容について諾否の自由のないまま、定められた業務を提供していたものであるから、会社の指揮監督下の労務の提供であったとしました。

 さらに、被告メンバーは、会社から報酬を月額で定額支払われており、グループ加入当初低かった月額が、在籍期間が長くなるにつれて漸次増額されており、また被告メンバーは、週に1日程度の休日を与えられるほかは、時間的にも場所的にもある程度の拘束を受けながら、労務を提供していたものであるから、その労務の対償として固定給を支払われていたとしました。

 以上のことなどから、判決は、被告メンバーの労働者性を認め、違約金条項は労基法16条に違反して無効であるとして、会社の請求を棄却し、被告メンバーの未払賃金請求を認容しました。

※控訴

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