Case548 契約書なく倉庫作業に従事した者が雇用保険法、厚生年金法及び健康保険法上の労働者に当たるとされた事案・国・労働保険審査会ほか(共立サポート)事件・大阪地判令5.4.12労判1316.46
(事案の概要)
原告会社が、労働保険審査会がした本件労働者に原告会社を事業者とする雇用保険の被保険者資格を認める裁決並びに社会保険審査官がした本件労働者に原告会社を適用事業所とする厚生年金保険及び健康保険の被保険者資格を認める決定の取消しを求めた取消訴訟です。
本件労働者は、原告会社から勧誘を受けて倉庫作業を行っていましたが、契約書は作成されておらず、労働者扱いされていませんでした。
(判決の要旨)
判決は、本件労働者が雇用保険法4条1項の「適用事業に雇用される労働者」や厚生年金保険法9条及び健康保険法3条1項本文の「使用される者」に当たるかは、労基法上の労働者性が認められるかと基本的に同様に解するとし、その判断に当たっては、契約の形式にとらわれるのではなく、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関する諸要素を総合考慮し、実質的に判断する必要があるとしました。
そして、本件労働者は、業務遂行上の指揮監督を受けて本件倉庫作業に従事していたと認められる上、作業時間に関する拘束も受けており、労務提供の代替性もなかったこと、本件倉庫作業に係る本件労働者の報酬は時給計算されていたこと、本件労働者は、本件倉庫作業を行うに当たり、機械・器具を一切提供しておらず、かえって、原告会社らから携帯電話の貸与を受けており、その報酬額も定額であったこと、本件労働者の専属性は高かったといえること等に照らすと、本件労働者は、使用者による指揮監督下で労務を提供し、当該労務提供の対価として報酬を受けていたというべきであるから、本件労働者の労働者性は肯定できるとして原告会社の請求を棄却しました。
※控訴