【整理解雇】Case604 コロナ禍における英会話教室店舗の閉鎖を理由とする整理解雇が無効とされた事案・ACラーニング事件・東京地判令4.8.17労判1325.32

労働者が勤務する店舗が閉鎖されてしまった場合、整理解雇はやむを得ないのでしょうか。

ACラーニング事件は、新型コロナウイルス感染症の影響による一部教室の閉鎖に伴う英会話スクール事業者の整理解雇の有効性が争われた事案です。

【事案の概要】

原告労働者は、英会話指導などを目的とする被告会社に無期雇用された台湾籍の外国人講師です。被告は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う業績悪化を理由に、原告が所属する英会話スクール店舗の閉鎖を決定し、2020年5月1日付で原告を整理解雇する意思表示をしました。

原告は、この解雇が無効であると主張し、雇用契約上の地位確認等を求めました。

【判決の要旨】

①人員削減の必要性

裁判所は、被告が英会話スクール事業以外にも事業を行っているにもかかわらず、全社的な財務資料や組織図を提出しなかったため、店舗閉鎖の判断の合理性や余剰人員削減の必要性を具体的に肯定するには至らないと判断しました。また、原告が閉鎖される店舗の専属スタッフとして採用されたとは認められないとしました。

②解雇回避努力

裁判所は、広告費削減や事業再編などの具体的な内容や効果を示す資料が全く提出されておらず、十分な解雇回避努力があったとは認め難いとしました。

③人選の合理性

前述したように、原告が閉鎖される店舗の専属スタッフとして採用されたとは認められないとしました。

以上より、解雇手続きの相当性について検討するまでもなく、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、解雇権を濫用したものとして無効であるとしました。

【まとめ】

• 会社が他にも事業を行っている場合、事業者は全社的な経営状況を示す客観的な資料を提出し、人員削減の必要性や解雇回避努力を具体的に立証する必要がある。

• 特定の店舗の専属スタッフであるという主張は、雇用契約書等で明示的に合意されていなければ、人員削減の必要性や人選の合理性を裏付ける根拠にはならない。

※控訴

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