【不当労働行為】Case649 産業別最低賃金が独禁法に違反するおそれがあるという理由で事業者団体が団体交渉を拒否したことが不当労働行為と認定された事案・国・中労委(一般社団法人日本港運協会)事件・東京地判令和7年9月16日労判1340号5頁

【事案の概要】

中央労働委員会の不当労働行為救済命令に対して、事業者団体である原告X法人(一般社団法人日本港運協会)が起こした取消訴訟です。

X法人は、全国の港湾運送事業者等を会員とする事業者団体です。組合(港湾労働組合の連合体)は、長年にわたりX法人との間で「産業別最低賃金」に関する団体交渉を行い、労働協約を締結してきました。しかし、平成27年頃から、X法人は、事業者団体が賃金を決定することは独禁法におけるカルテル(不当な取引制限)等に抵触する恐れがあるとして、産別最低賃金に関する統一回答を拒否するようになりました。

平成31年2月、組合側が産別最低賃金に関する団体交渉を申し入れましたが、X法人は独禁法違反の懸念を理由に回答を拒否しました(本件回答拒否)。

これに対して組合が不当労働行為救済申立てをし、中央労働委員会は、X法人の対応は正当な理由のない団交拒否であり不当労働行為に当たるとして、X法人に対して、誠実な団交応諾等を命じました。X法人はこの命令の取消しを求めて提訴しました。

主な争点は、①X法人が労組法上の「使用者」に当たるか、②独禁法抵触の懸念が団交拒否の「正当な理由」になるか、の2点です。

【判決の要旨】

1. 事業者団体の「使用者」性

裁判所は、「労組法 7 条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除,是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると,雇用主以外の事業主であっても,その労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,その限りにおいて,当該事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である」としました。

そして、X法人と組合との間の基本協約では、合意事項が原則として全ての港湾労働者に適用されるとされ、X法人は会員事業者を指導する義務を負っていました。これによりX法人は会員事業者に対し具体的な影響力を有していることから、労働条件等を現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあるとして、X法人の使用者性が認められました。

2. 独禁法違反の懸念と団交拒否の「正当な理由」

X法人は、産別最低賃金の統一回答やそのための調整行為が独禁法違反になる恐れがあるため、団交拒否には正当な理由があると主張しました。

しかし、公正取引委員会は、一般に労働法制により規律されている分野については独禁法の問題とはならないと考えており,かつ,本件団交申入れへの統一回答や本件準備行為についても独禁法違反とはならないと回答していました。

そのため、裁判所は、本件団交申入れに対する統一回答や本件準備行為が独禁法に違反する行為であると判断されるおそれが具体的なものであるとは認められないから,独禁法違反を理由とする本件回答拒否は「正当な理由」があるとはいえないとしました。

3. 結論

以上のことから、本件回答拒否は正当な理由のない団交拒否(不当労働行為)に該当し、独禁法抵触の恐れを理由に回答を拒否してはならないとした労働委員会の命令に裁量権の逸脱・濫用はないとして、X法人の請求は棄却されました。

※控訴

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