【不当労働行為】Case661 市の事業の運営を目的とする管理団体の組合員との関係で市の使用者性が認められた事案・京都府・府労委(京都市・団交拒否)事件・京都地判令7.7.24労判1344号45頁
【事案の概要】
京都市に団体交渉応諾を命じる不当労働行為救済命令に対して、市側及び労働組合側の双方が敗訴部分の取消しを求めた行政訴訟です。
市は、児童館等における放課後児童健全育成事業(学童クラブ事業)を「京都市学童保育所管理委員会(管理委員会)」やその他の運営団体(本件他団体)に委託・指定して実施させており、各団体の職員(組合員)と市との間に直接の雇用関係はありませんでした。 組合は市に対し、各団体の組合員の賃金(基本給や諸手当)の改善等を求める団体交渉を申し入れたものの、市は直接の雇用関係等がないことを理由にこれを拒否しました。
京都府労働委員会は、市は「管理委員会」の職員との関係に限り、賃金に関して労働組合法7条2号の「使用者」に当たるとして、団体交渉応諾を命じる救済命令を出しましたが、本件他団体の職員に関しては市の使用者性を否定して申立てを棄却しました。
主な争点は、市が、①他団体組合員、②管理委員会組合員との関係において、それぞれ労組法7条2号の「使用者」に当たるか否かです。
【判決の要旨】
裁判所は、労働委員会の命令を適法と認め、双方の請求を棄却しました。
1. 雇用主以外の者の労組法上の「使用者」性
裁判所は、労働契約の当事者ではない第三者の使用者性について、最高裁(朝日放送事件)の法理を引用し、「使用者とは,一般に労働契約上の雇用主をいうものであるが,同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除,是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると,雇用主以外の事業主であっても,その労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,その限りにおいて,上記事業主は同条の「使用者」に当たると解するのが相当である」としました。
2. 他団体組合員についての使用者性の否定
裁判所は、本件他団体等の運営団体について、市から支払われる委託料の額等により賃金額決定の裁量に相当強度の制約はあると認めました。しかし、運営団体は学童クラブ事業以外の事業を行うことは制限されておらず、委託料の用途や賃金の支払い等は各団体の経営上の判断に委ねられていると指摘しました。そのため、各運営団体の経営上の裁量を失わしめるほどに、市が職員の賃金について実質的に決定していたとは認められず、「現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にあるとはいえず」、労組法7条2号の使用者には当たらないと判断しました。
3. 管理委員会組合員についての使用者性の肯定
一方、裁判所は、管理委員会は公設学童クラブの運営それ自体を目的として設立された権利能力なき団体であり、収入も利用料金と市からの委託費等に限られ、市に依存せざるを得ない性格を有していました。さらに、市は従前から管理委員会の職員の賃金等について労働組合との団体交渉に応じてきた歴史があり、就業規則や賃金規則の内容等を通じても、実際には職員の賃金額決定に市の強い影響力が及んでいました。これらを総合し、市は「管理委員会の職員の賃金額の決定に関し,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にあったものと認めるのが相当である」として、労組法7条2号の使用者に当たると判断しました。
※控訴

