Case190 懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は特段の事情のない限り当該懲戒の理由にならないとした最高裁判例・山口観光事件・最判平8.9.26労判708.31【百選10版53】
(事案の概要)
原告労働者が被告会社に対して、疲労困憊のため翌日から2日間休みたいと申し入れたところ、会社は出勤拒否を理由に原告を懲戒解雇ないし普通解雇しました。
原告が申し立てた地位保全等仮処分において、会社は、原告が採用時に提出した履歴書に虚偽の事実が記載されていること(当時57歳を45歳と記載)を本件解雇の理由に追加しました。また、本件解雇が無効な場合に備えて、上記経歴詐称を理由に予備的に改めて懲戒解雇しました。
本件は、原告が本件解雇及び予備的解雇の無効を主張し、本件解雇後の賃金の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
一審判決及び控訴審
一審及び控訴審は、本件解雇について、経歴詐称は解雇後に判明した事実であって、当該懲戒処分時に懲戒事由とされていないから、これを理由として懲戒解雇することはできないとしました。
また、普通解雇であれば解雇後に判明した事実も解雇理由になり得るとしても、本件解雇の経緯からすると、本件解雇は解雇権の濫用であるとして本件解雇を無効としました。
他方、予備的解雇は有効であるとして、予備的解雇までの賃金請求を認めました。
上告審
最高裁は、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を基礎づけることはできないとし、控訴審判決を維持しました。