Case206 代表者に消極意見や反対意見を述べたこと等を理由に部長職から一般職へ降格し給与を8万5000円減額した処分等が違法無効とされ慰謝料も認められた事案・ ビジネスパートナーほか事件・東京地判令4.3.22労判1269.47

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社の子会社に取締役として出向し部長職に就いていましたが、営業部全体の統括を打診されて難しいと答えたり、被告代表者に反対意見を述べたところ、被告代表者から辞職を強く促され、自宅待機を命じられた後に、子会社の取締役を解任し出向を解除すると告げられ、被告会社で役職のない状態で働く気がなければ別の道を検討するよう求められました。

 そして、被告会社は、原告を一般従業員に降格し(本件降格)、給与を月額47万7000円から8万5000円減額しました(本件降給)。

 被告会社の就業規則および給与規程には以下の規定がありました。

「業務上の必要性がある場合、その職位を解任(降格)することがある。」

「基本給および各種手当は……職群、職級、等級、職格等によりこれを定める。」

「給与改定(昇給・降給)は、能力、勤務成績、勤務態度等を人事考課により査定し、その結果をもってこれを行う。」

 また、被告会社は、原告が子会社で虚偽の報告をしたことなどを理由に降格する本件懲戒処分をし、給与をさらに5万4500円減額しました。

 本件は、原告が本件降格、本件降給および本件懲戒処分の無効を主張し、部長として全額前の賃金の支払いを受ける地位の確認および差額賃金の支払いを求めた事案です。

 また、原告は、被告会社および被告代表者に対して、違法な処遇や退職勧奨などに対する慰謝料請求をしました。

(判決の要旨)

 判決は、被告会社は、就業規則上人事考課により降格やこれに伴う降給を決定する権限を有しているとしましたが、その濫用は許されず、不当な動機・目的をもってされたものであるときや、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情がある場合には降格・降給が違法無効となるとしました。

 そして、本件降格・降給は、原告の意見に被告代表者が立腹し、違法・不当な目的で行ったものと推認されるとして、違法無効であるとしました。

 また、懲戒事由も認められないとして本件懲戒処分も無効とし、部長として月額47万7000円の支払いを受ける地位にあることの確認および差額賃金の支払いを認めました。

 さらに、本件降格・降給および本件懲戒処分は被告代表者が命じて行わせたことが明らかで不法行為を構成するとして、被告会社(会社法350条)と被告代表者に慰謝料100万円の支払いを命じました。

※確定

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