Case212 即時確定の利益を欠くとしてパワハラ等に基づく損害賠償債務や謝罪文交付義務の不存在確認訴が却下された事案・ユーコーコミュニティー従業員事件・東京高判令4.10.20
(事案の概要)
原告会社が被告労働者に対して、パワハラ等に基づく損害賠償責任や謝罪文の交付義務が存在しないことの確認を求めた債務不存在確認訴訟です。
被告労働者は、会社に対して、マタハラやパワハラを受けたとして謝罪文等を要求していたました。
これに対して、会社が、①「会社の被告労働者に対する別紙発言目録記載の発言を理由とする損害賠償債務が存在しないこと」、②「会社の被告労働者に対する平成27年4月から30年4月までに行われた訴外A(加害者とされる上司)による優越的な関係を背景とする業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動による損害賠償債務が存在しないこと」、③「会社の被告労働者に対する別紙発言目録記載の発言を理由とする謝罪文を交付する義務が存在しないこと」の確認を求めました。
(判決の要旨)
一審判決・横浜地相模原支判令4.2.10労判1268.68
判決は、確認の訴えが適法であるためには、債権(債務)の発生原因事実を明記し、他の債務から識別して、その存否が確認しうる程度に特定する必要があるとしたうえ、パワハラ等が不法行為に該当するか否かは、行われた日時場所、行為態様や行為者の職業上の地位、年齢、行為者と被害を訴えている者が担当する各職務の内容や性質、両社のそれまでの関係性等を請求原因事実として主張して当該行為を特定し、行為の存否やその違法性の有無等を検討することにより判断されることとなるとしました。
そして、会社の請求は、行為の特定が不十分で、他の債務から識別して、その存否が確認しうる程度に特定がされているとはいえないとして、不適法却下しました。
控訴審判決
控訴審は、被告労働者が会社に対してパワハラ等を理由とする損害賠償請求をする現実的危険があるとはいえないとして、即時確定の利益を欠くという理由で会社の請求を却下しました。