Case230 支店長解任に伴う賃金減額を無効とし支店長の管理監督者性を否定した事案・阪神共同作業事件・東京地判令4.2.25
(事案の概要)
被告会社は、原告労働者に対して、支店長として基本給月30万円を受給していましたが、支店長解任に伴いこれを10万円減額しました。会社には賃金規程はありませんでした。
本件は、原告が会社に対して、賃金減額の無効を主張して差額賃金の支払いを求めるとともに、未払残業代の支払い等を求めた事案です。
会社は、原告との間で、支店長への就任を前提に10万円を上乗せする旨の合意をしており、賃金減額についても明示黙示の合意があったと主張しました。また、支店長は管理監督者性に該当すると主張しました。
なお、家族手当が割増賃金の算定基礎に含まれるかも争点となり、含まれるとされました。
(判決の要旨)
1 賃金減額
判決は、原告と会社が、契約時に支店長への就任を前提に10万円を上乗せする旨の合意や、支店長解任時に賃金減額について合意した事実はないとしました。
また、原告が減額された給与を異議なく受領していたからといって、賃金減額について黙示の合意があったとはいえないとし、賃金減額を無効とし、差額賃金請求を認めました。
2 管理監督者性
判決は、以下の点等を考慮して原告の管理監督者性を否定しました。
・原告は支店長という立場にあったものの、支店の従業員に係る労務管理に関する実質的な職責や権限はなかった
・原告が幹部会議に出席していたことをもって会社の重要方針の決定に参画していたとはいえない
・原告は支店長在任中も7割以上の時間を運転業務に費やしており、かかる勤務態様からすれば、むしろ厳格な労働時間等の規制に服せしめる必要があった
・会社が原告の賃金等を厚遇したのは、原告に経験のない管理職業務への期待ではなく、独自の人脈等を活かしたイベント関連業務の受注への期待からであった