Case237 業務中の同僚の故意の暴行による負傷について業務起因性を認めて労災不支給決定を取り消した事案・国・豊橋労基署長(丸裕)事件・名古屋地判令4.2.7労判1272.34
(事案の概要)
労災不支給決定に対する取消訴訟です。
本件会社の従業員である原告労働者は、本件会社が経営するホテル内で調理業務に従事していた際、ホテル従業員Aに指示をしたところAから暴行を受け、頚部等を負傷したため、労基署に労災申請しましたが、業務との因果関係がないとして不支給とされました。
なお、厚労省通達「他人の故意に基づく暴行による負傷の取扱いについて」(本件基準)は、業務と他人の故意に基づく暴行による負傷との相当因果関係の判断について、「業務に従事している場合又は通勤途上である場合において被った負傷であって、他人の故意に基づく暴行によるものについては、当該故意が私的怨恨に基づくもの、自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き、業務に起因する又は通勤によるものと推定することとする。」としています。
(判決の要旨)
判決は、業務と負傷等との間に相当因果関係を認めるためには、当該負傷等の結果が、当該業務に内在又は通常随伴する危険が現実化したものと評価し得ることが必要であるとし、これを本件基準の内容を参考にしつつ、個別具体的な事情を総合的に考慮して判断すべきとしました。
そして、原告は業務遂行中にAの故意に基づく暴行により負傷しており、私的怨恨や自招行為によるものとは認められないとして、業務との因果関係を認め、労災不支給決定を取り消しました。
※確定