Case260 私生活の非行を理由として行われた警察官に対する執拗な退職勧奨等が違法であるとして慰謝料請求が認められた事案・山口県事件・広島高判令4.4.21判時2550.43
(事案の概要)
原告労働者は、山口県警察の警察署で警察官として勤務していました。
原告は、私生活で多額の借金を抱えており(借金問題)、既婚女性と不貞関係にありました(女性問題)。
警察署長らは、借金問題と女性問題を理由に原告に自主退職を促しましたが、原告はこれに応じませんでした。
その後も、警察署長らは、原告に対して自主退職か自主降格かの二者択一を迫ったり、原告の借金問題と女性問題の調査を徹底的に行う旨告げたり、執拗に退職勧奨を行い、原告はやむを得ず降格願を提出しました。
本件は、原告が違法な退職勧奨等を受けたと主張し、山口県に対して国家賠償として慰謝料請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、関係者らの原告に対する行為は、原告を自主退職に追い込もうと企図し、執拗にいわば組織的に行った違法なものというべきであり、その行為の悪質性は大きいとしました。
また、損害について、原告は最終的には降格願を提出するに至っており、その間に多大な絶望感や屈辱感等の精神的苦痛を被ったとした一方、原告が以前から自律神経失調症等を患っていたことや、家族等からの叱責等も精神的苦痛に影響している可能性があることから、慰謝料額は150万円が相当であるとしました。