Case335 長時間労働に加え職員の時間外勤務時間を月80時間以内に修正する作業をさせられ精神疾患を発症した公務員について公務起因性が認められた事案・地方公務員災害補償基金愛知県支部長事件・名古屋地判令3.4.19労経速2458.25
(事案の概要)
公務災害を否定する処分に対する取消訴訟です。
市の職員であった原告労働者は、それまで庶務・管理的な内部事務の経験はありませんでしたが、平成19年4月に本件病院の事務強管理下に配置換えになり、職員の出張、手当等の支給、休暇に関する内部事務を担当することになりました。
原告の業務は、対応に苦慮する医師らを相手にするものであったことに加え、原告は本件病院から職員の時間外労働時間を月80時間以内に修正するよう命じられていました。また、本件病院は労基署から是正勧告を受けており、原告はその対応もしなければなりませんでした。
その結果、原告の時間外労働時間数は、最初の3週間で少なくとも120時間に及びました。
原告は、平成19年4月25日に双極性障害を発症しました。
(判決の要旨)
判決は、原告は平成19年4月、配置換え直後に長時間に渡って慣れない庶務業務に従事したものであり、特に職員の時間外勤務時間を月80時間以内に修正する作業は、それ自体法律的に問題がある業務であるばかりか、ただでさえ長い原告の時間外勤務時間をさらに増大させる甚だ理不尽なものであって、原告に対して質的にも量的にも大きな心理的負荷を与えたとして、公務起因性を認めました。