Case356 在日朝鮮人に対する本籍や氏名等の虚偽申告を理由とする内定取消し及び懲戒解雇が国籍による差別に当たるとして違法無効とされた事案・日立製作所事件・横浜地判昭49.6.19労判206.46
(事案の概要)
在日朝鮮人である原告労働者は、被告会社の雇用期間2か月の臨時工に応募し内定を得ましたが、提出した履歴書に通称名を記載し本籍等を偽り、面接官にも履歴書記載の氏名や本籍が真実であると回答しました。
原告が、会社に要求された戸籍謄本につき韓国人であるため提出できないと答えたところ、「身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或いは真実を秘匿した」ことを理由に内定を取り消されました。
本件は、原告が会社に対して、内定取消しの無効を主張して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。会社は予備的に懲戒解雇も主張しました。
(判決の要旨)
判決は、内定取消しが有効になるためには単に「身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或いは真実を秘匿した」事実があるだけでなく、その結果労働力の資質、能力を客観的合理的にみて誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるものとされたとき、又は企業の運営にあたり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠いていて企業内に留めておくことができないほどの不信犠牲が認められることが必要であるとしました。
そして、在日朝鮮人の置かれた状況などから本件では本籍、氏名等の虚偽記載は内定取消事由に当たらないとし、内定取消し及び懲戒解雇を無効とし地位確認等を認めました。
さらに、本件内定取消等は国籍による差別であり労基法3条、民法90条により無効であるとしたうえ、慰謝料50万円も認めました。
※確定