Case441 労働組合が会社の取引先銀行や顧客取引先に会社の違法行為を指摘する要請書を送付したことなどが正当な組合活動に当たるとされた事案・プレカリアートユニオンほか(粟野興産)事件・東京高判令4.5.17労判1295.53
(事案の概要)
原告会社が、被告労働者及び被告労働組合に対して信用毀損を理由に損害賠償請求した事案です。
被告労働者は、会社に解雇されたため、個人加盟の組合に加入しました。
被告らは、会社の取引先銀行や顧客取引先に、会社が過積載や産業廃棄物免許の名義貸しを行っている事実、会社の違法行為を指摘したことにより被告労働者をゴミ拾いに配置転換し解雇した事実、などを摘示する要請書を送付し、また同内容の街宣活動を行っていました。
(判決の要旨)
判決は、本件各街宣活動および本件要請書の送付行為といった労働組合の活動については、その内容が使用者の信用を毀損するものであったとしても、行為により摘示された事実が真実であるか否か、または真実と信じるについて相当な理由が存在するか否かに加え、行為の目的、必要性、態様およびその行為が及ぼす影響など、一切の事情を総合考慮し、その活動が正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであると判断される場合には、違法性が阻却されるとしました。
そして、組合らが摘示する事実は、いずれも真実であるか、真実と信じるについて相当な理由が認められ、目的も主に解雇等の労働問題に関する交渉を有利に進めるとともに、会社の過積載等の違法行為を是正させ、もって会社における労働環境を改善しようとする点にあると認められ、本件各行為をする必要性も肯定できること、行為の態様も社会相当性を逸脱するまでのものとはいえず、会社に対する影響も大きいものとはいえないことなどの諸事情を総合すれば、本件各行為は、正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであり、違法性が阻却されるとし、会社の請求を棄却しました。
※確定