Case473 試用期間満了まで20日程度を残してされた能力不足解雇について解雇すべき時期の選択を誤ったものとして無効とした事案・医療法人財団健和会事件・東京地判平21.10.15労判999.54
(事案の概要)
原告労働者は、被告法人が経営する病院の健康管理室に事務総合職として採用されました。試用期間は3か月とされました。
原告にはパソコンに関する実務経験がなかったため、試用期間中1か月ごとに面接を行うこととされました。
2回の面談の中で、原告はパソコン入力等のミスが多いことを指摘され、落ち込んで退職をほのめかすなどし、事務次長が原告を励ますやり取りがありました。
その後、原告は労働組合に加入し法人に対してパワハラや退職強要があったと訴え、体調不良により休職届を提出しました。
法人は、試用期間満了まで20日程度を残して、事務能力の欠如により常勤事務職員としての適性に欠けることを理由に原告を解雇しました。
本件は、原告が法人に対して解雇の無効を主張して雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
パワハラ・退職強要などの不法行為も主張しましたが、否定されています。
(判決の要旨)
判決は、原告のミスないし不手際は相応のマイナス評価を受けるものであるとしつつ、勤務状況等が改善傾向にあり、原告の努力如何によっては、残りの試用期間を勤務することによって法人の要求する常勤事務職員の水準に達する可能性もあるのに、試用期間満了まで20日程度を残して原告を解雇したことは、解雇すべき時期の選択を誤ったものとして、解雇を無効としました。
※控訴