Case481 派遣先社員が派遣労働者に対して極端な言辞や軽口を用いた指導を繰り返した行為が労務遂行上の指導・監督の場面における監督者の注意義務に違反するとされた事案・アークレイファクトリー事件・大阪高判平25.10.9労判1083.24
(事案の概要)
原告労働者は、派遣会社から被告会社の工場に派遣されて製造の業務に従事していました。
原告は、派遣先である被告会社の従業員Aから、以下のパワー・ハラスメントを受けたと主張しました。
①Aから指示された業務を製造責任者Bの指示で止めたところ、Aから命令違反であると非難された
②Aからわざと生産効率を落とすように言われた
③Aから「殺すぞ」「あほ」などと叱責された
④体調不良で欠勤した際、Aから仮病でパチンコに行っていたと疑いをかけられたり、咎められた
⑤原告が大事にしている車について「かち割ったろか」などと危害を加えるかのようなことをふざけて言う
本件は、原告が、使用者責任などに基づき、被告会社に対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、Aの上記①~③の言動については、労務遂行上の指導・監督の場面において、監督者が監督を受ける者を叱責し、あるいは指示等を行う際には、労務遂行の適切さを期する目的において適切な言辞を選んでしなければならないのは当然の注意義務であるとしました。
本件では、それなりの重要な業務であったとはいえ、いかにも粗雑で、極端な表現を用い、配慮を欠く態様で指導されており、かかる極端な言辞を用いるほどの重大な事態であったかは疑問であるし、監督を受ける者として、監督者がそのような言辞を用いる性癖であって、その発言が真意でないことを認識し得るとしても、業務として日常的にそのような極端な言辞をもってする指導・監督を受忍しなければならないとまでいえず、逆に、監督者において、労務遂行上の指導・監督を行うに当たり、そのような言辞をもってする指導が当該監督を受ける者との人間関係や当人の理解力等も勘案して、適切に指導の目的を達しその真意を伝えているかどうかを注意すべき義務があるとしました。
また、Aの上記④、⑤の指導に付随された軽口ともみえる言動については、それが1回だけといったものであれば違法とならないこともあり得るとしても、原告によって当惑や不快の念が示されているのに、これを繰り返し行う場合には、嫌がらせや時に侮辱といった意味を有するに至り、違法性を帯びるに至るとしました。
本件では、監督を受ける者に対し、極端な言辞をもってする指導や対応が繰り返されており、全体としてみれば違法性を有するに至っているとしました。
以上より、Aの注意義務違反と被告会社の使用者責任を認め、慰謝料30万円の支払を命じました。
※確定