Case550 外務省職員について自己申告の超勤時間に基づいた超勤手当の請求が認められた事案・国(外務省職員・俸給等請求)事件・横浜地判令4.9.7労判1316.61
(事案の概要)
外務省の任期付公務員(外務事務官)であった原告労働者は、超過勤務をするたびに職場のクローズドLAN上にある「超勤調べ」のファイルにアクセスして、終業時間及び超勤時間を記入していました。
しかし、国は、原告に対して、上記「超勤調べ」に記載された超勤時間のうち、上司が作成した「超勤命令簿」に記載された時間についてしか超勤手当を支払っていませんでした。
本件は、原告が国に対して、上記「超勤調べ」に基づいて超勤手当の支払いを求めた事案です。
なお、原告は採用時の俸給格付けが違法であるとして俸給請求なども行っていましたが棄却されています。
(判決の要旨)
判決は、①「超勤調べ」のファイルは、職場のクローズドLAN上の共有フォルダに保存されており、職員は、超過勤務を行うごとに、上記ファイルにアクセスし、終業時間及び超勤時間並びに超勤理由を記入することになっていたこと、②他の職員も実際に「超勤調べ」に終業時間及び超勤時間等を記入していたこと、③超勤命令簿に記載された超過勤務日は、「超勤調べ」に記載された超過勤務日の一部であり、その一部については終業時間及び超勤時間もおおむね一致していること、④「超勤調べ」に記載があるのに超過勤務命令簿に記載のない日についても、一部の日については、超過勤務を行っていたとする時間に原告が職務に関連する電子メールを送信していたこと、⑤パソコンのログアウト時間と「超勤調べ」における終業時間とは、おおむね近接していること、⑥職場では、昼の休憩時間について、当番制で電話番を行っており、当番に当たった者が休憩時間を前後にずらして取得することは行われていなかったことから、原告は「超勤調べ」に記載されている超過勤務を行っていたとしました。
そして、「超勤調べ」は随時上司らが確認することができたことなどから、原告の上司らは、原告の超過勤務の状況を認識していたか、あるいは認識し得る状況にあったが、上司らが原告に対し、超過勤務を行うことを制限したり、注意したりしたなどの事情は一切うかがわれないとしました。したがって、原告の超過勤務は上司の明示又は黙示の指示によるものであったとし、原告の超勤手当の請求を認めました。
※控訴